・イチオシメニュー

東京・江戸川区中葛西。駅前の賑わいから少し離れた場所に、静かに暖簾を掲げるのが「和ごころ 八代」だ。店に一歩足を踏み入れると、まず感じるのは空気の張り。落ち着いた和の設えの中に、料理と真摯に向き合う店主の姿勢が、そのまま空間に表れている。
・こだわり
八代の料理を支えているのが、毎朝欠かさず足を運ぶ豊洲市場での仕入れだ。「産地にはあまりこだわらないんです。その日一番いいものを選ぶだけ」と店主はさらりと語る。ブランドや産地名よりも、目利きとしての感覚を信じる。その姿勢が、料理の芯を強くしている。
魚は鮮度はもちろん、身質や脂の入り方まで細かく見極めて仕入れられる。刺身は包丁を入れた瞬間から違いが分かり、口に運べば雑味のない旨みがすっと広がる。派手な演出はなくとも、素材の良さがそのまま伝わる一皿だ。
焼き物に使われるのは、本格的な炭焼き台。火力の強い炭を操り、表面は香ばしく、中はふっくらと仕上げていく。魚も肉も、炭の遠赤外線によって余分な水分を飛ばし、旨みだけを閉じ込める。カウンター席では、その焼きの工程を間近に見ることができ、炭のはぜる音や香りもまた、ごちそうの一部となる。
料理全体を通して感じるのは、「特別な日に使ってほしい」という明確な意識だ。記念日や接待、大切な人との会食。そんな場面にふさわしい丁寧な仕事と、程よい緊張感がある一方で、過度に堅苦しくならない配慮も忘れない。「いい時間を過ごしてもらうことが一番ですから」と、接客にも柔らかさがある。
意外に思うかもしれないが、和ごころ 八代はお子様連れも歓迎している。静かな店でありながら、家族での食事も受け入れる懐の深さがある。子ども用の対応や料理の相談にも応じてくれるため、特別な日を家族全員で過ごしたい人にも心強い存在だ。
確かな目利き、炭焼きという確立された技、そして使う人の時間を大切にする姿勢。「和ごころ 八代」は、日常から少し背筋を伸ばしたい日に、安心して足を運べる一軒である。料理だけでなく、その場で過ごす時間そのものが、静かに記憶に残る店だ。
・ 店舗情報詳細
和ごころ 八代
03-6808-0169
東京都江戸川区中葛西3-18-14
17:00-23:00
月

