・イチオシメニュー

和歌山県和歌山市黒田――。駅から少し歩いた先に、静かに佇む和の趣あふれる食事処「いず美(いずみ)」がある。控えめな看板と、やわらかな灯りが差し込む落ち着いた佇まい。暖簾をくぐると、凛とした空気とともに、どこか温もりを感じる空間が広がる。地元の常連客だけでなく、最近では観光客も足を運ぶ人気店だ。
・こだわり
調味料から野菜、魚に至るまで、可能な限り地元・和歌山の食材を使用している。「遠くの珍しいものよりも、身近な土地で採れる旬の味を大切にしたい」と語る店主。紀州の豊かな自然が育んだ食材を、丁寧な手仕事で生かすのが「いず美」の料理だ。
たとえば、地元漁港から届く新鮮な魚。朝に水揚げされたばかりの鯛やカマス、太刀魚などをその日のうちに調理し、素材の持つ旨みを最大限に引き出す。野菜も地元の契約農家から仕入れた旬のものばかり。春は筍、夏は茄子、秋は柿、冬は金柑や大根――季節ごとに顔ぶれが変わる。そんな“和歌山の四季”を感じられる献立こそが、「いず美」の真髄だ。
さらに特筆すべきは、料理を彩る器へのこだわり。自ら各地へ足を運び、手仕事の器を一つひとつ買い付けている。「料理は、器と一緒に完成するもの」と語る。備前焼、信楽焼、有田焼、そして和歌山の陶芸家による作品まで、店内の棚には美しく並べられている。どの器にも温もりと個性があり、料理を盛りつけるたびに「今日はどの器にのせようか」と心が弾むのだという。実際、料理が運ばれてくると、器の色合いや質感と料理の調和に思わず見とれてしまう。見た目の美しさもまた、この店の魅力の一つだ。
そして、料理に欠かせないのが和歌山の地酒。紀土(きっど)、黒牛、車坂など、県内の蔵元から厳選された銘酒がずらりと並ぶ。店主自ら蔵を訪ね、料理との相性を確かめて仕入れるというこだわりよう。料理の繊細な味わいを邪魔せず、むしろ引き立てる地酒ばかりだ。常連客の中には、料理に合わせて酒を選ぶ“ペアリング”を楽しむ人も多いという。
観光客にもおすすめなのは、和歌山の魅力を一度に味わえるコース仕立ての食事。紀州梅を使った前菜から、地魚の焼き物、旬野菜の炊き合わせまで、和歌山の恵みを余すことなく堪能できる。旅の途中で訪れた人も「和歌山の良さを一晩で感じられる」と感嘆の声をあげるほどだ。
店内は、木のぬくもりを感じる落ち着いた雰囲気で、カウンター越しに店主との会話を楽しむこともできる。丁寧に盛られた料理と、それを支える器、そして和やかな時間――まさに五感で“和歌山”を味わえる場所だ。
「器も料理も、人の手で作られるもの。そのぬくもりをお客様に感じてもらえたら嬉しいです。」
そう穏やかに語る店主の笑顔が、この店のやさしさを象徴している。
・ 店舗情報詳細
和歌山県和歌山市黒田261-2
073-460-9469
和歌山県和歌山市黒田261-2
月・火・木・金・土・日・祝日・祝前日・祝後日
11:30 – 15:00
17:30 – 22:00
水
