松葉

・イチオシメニュー

静岡県藤枝市・駅前通りに、地元で長年愛されてきた名店がある。店の名は「松葉（まつば）」。創業から43年、昭和の香りをそのままに残すこの串カツ専門店は、藤枝の人々の“日常のごちそう”として親しまれてきた。赤提灯の灯りが夕暮れにともると、どこか懐かしい気持ちに誘われ、今夜も暖簾をくぐる常連客が後を絶たない。

・こだわり

松葉の串カツは、衣が驚くほど軽い。薄く均一につけられた衣は、ひと口かじるとサクッと音を立てて崩れ、中の具材が熱々のまま現れる。肉は柔らかく、野菜は瑞々しさを保ち、海老やホタテは旨みが閉じ込められている。揚げ油は毎日こまめに交換し、温度管理も徹底。油の香りまで計算された繊細な仕事ぶりが、長年の信頼を支えている。

しかし松葉の真髄は、実は串そのものではなく、その味を支える特製の手づくりソースにある。創業当時から一度も途切れさせず、継ぎ足しで守り続けてきたこのソースは、まさに店の“命”。野菜と果物をベースに、十数種類のスパイスをブレンドし、じっくりと煮込むことで生まれる深いコクとまろやかな甘みが特徴だ。酸味と甘み、そして香ばしさのバランスが絶妙で、どの串にも合う万能の一本。常連客の中には、このソースを目当てに通う人も少なくない。

店内は、カウンターと小上がり席を合わせて20席ほど。昔ながらの居心地の良い空間で、常連同士が気軽に声を掛け合う。ビール片手に串を頬張りながら過ごす時間は、気取らない幸福そのもの。どこか懐かしい“昭和の酒場”の空気がここには息づいている。

また、串の種類も豊富で、定番の豚・牛・玉ねぎ・レンコンから、旬の野菜や季節限定の創作串まで常時20種以上。飽きのこないバリエーションが魅力だ。揚げたてを少しずつ楽しみながら、ソースをくぐらせて頬張る瞬間に、誰もが笑顔になる。

週末は遠方からの客やリピーターも多く、予約がおすすめだ。店内はすぐに満席になり、外で順番を待つ人の姿も珍しくない。それでも皆が待つのは、「松葉の串は、ほかでは味わえない」と知っているからだ。

43年の歴史が染み込んだソースと、揚げたての串。
「松葉」は、今も昔も変わらず、藤枝の夜に温かな灯をともしている。

・ 店舗情報詳細