・イチオシメニュー

北海道札幌市清田区。住宅街の中にひっそりと佇む「手打ちそば さくら 平岡本店」は、開店から二十年、地元で愛され続けてきた名店だ。落ち着いた木の香り漂う店内に足を踏み入れると、ふわりと広がるそばの香り。昼時ともなれば、常連客を中心に席がすぐに埋まる。長年にわたり“そば好きが通う店”として知られる理由は、ひとえにその確かな技と素材へのこだわりにある。
・こだわり
使用するそば粉にも徹底したこだわりがある。店で使うのは、“幻のそば粉”とも呼ばれる「ながわ」。長野県長和町でわずかに栽培される希少な品種で、風味・香り・甘みのバランスが絶妙と評されている。何度も現地を訪れ、契約農家と信頼関係を築きながら仕入れを続けてきた。「ながわは香りが繊細で、扱いが難しい。でも、これを使うことでそばの旨みが段違いになるんです」と語る。打ち立てのそばは、ほんのりとした甘みと香ばしさが立ち上がり、すすった瞬間に鼻へ抜ける香りが心地よい。
中でも多くのファンを魅了し続けているのが、*開業以来20年連続で人気No.1の「鴨せいろ」だ。香ばしく焼き上げた厚切りの鴨肉と、丁寧に仕込まれた熱いつけ汁。そこに冷たいそばをくぐらせると、鴨の旨みと脂の甘みが溶け合い、極上の調和を生み出す。つけ汁は、北海道産昆布と数種の鰹節を独自にブレンドしただしに、まろやかなかえしを合わせている。長年通う常連客から「これを食べると他では満足できない」と言われるほど、その味わいは格別だ。
また、そばだけでなく天ぷらや一品料理にも手を抜かない。旬の北海道野菜を中心に、その時期一番の食材を使い、軽やかでサクサクとした衣に仕上げる。油の温度や揚げ時間にも神経を配り、素材の甘みと香りを最大限に引き出すのが「さくら」流だ。
さらに、そば湯にも定評がある。茹で湯をそのまま使うのではなく、時間と温度を見極めて仕上げた濃厚なそば湯は、最後の一口までそばの香りを楽しませてくれる。食後に湯を注ぎ、つけ汁の残りと合わせて飲めば、まるでそばの余韻をもう一度味わうような豊かな満足感が広がる。
「特別なことはしていません。ただ、手を抜かないことを続けているだけです。」
そう語る店主の言葉には、職人としての誇りと、二十年の積み重ねから生まれる確かな信頼がにじむ。
派手な宣伝もせず、ひたすらに“本当にうまいそば”を追い求めてきた「手打ちそば さくら」。
香り、喉ごし、そして誠実な手仕事。
そのすべてが一椀に込められ、今日も訪れる人々の心と舌を静かに満たしている。
・ 店舗情報詳細
手打ちそば さくら 平岡本店
011-882-8131
北海道札幌市清田区平岡公園東1-12-5
月・火・水・木・金
11:00 – 15:30
17:00 – 20:30
土・日・祝日
11:00 – 20:30
