鮨天ぷら 菫

・イチオシメニュー

福島県会津美里町、田畑の広がるのどかな風景の中に、ひときわ上品な佇まいを見せる店がある。「鮨天ぷら 菫（すみれ）」。静かな通り沿いに立つ木造の建物に一歩足を踏み入れると、凛とした空気が漂い、磨き上げられたカウンター越しに店主の姿が見える。その所作は無駄がなく、握る姿には職人としての誇りと、食への真摯な姿勢がにじむ。

・こだわり

看板メニューは「極みにぎり」。その名の通り、店主が“今の自分の全て”を注ぎ込んだ渾身の一品だ。シャリは会津産のコシヒカリを使い、米の甘みと酢の香りのバランスを徹底的に追求。ネタは毎朝、市場と地元漁師から直接仕入れる新鮮な魚介が中心で、季節ごとに変化する。マグロ、白身、貝類、そして旬の地魚――どれも素材の魅力を最大限に引き出すよう、温度や厚みにまで細やかな配慮が行き届いている。握りは小ぶりながらも力強く、口の中でふわりとほどける。その一瞬に、職人の経験と情熱が凝縮されている。

もうひとつの自慢が、繊細な天ぷらだ。衣は驚くほど軽く、素材の風味を閉じ込める絶妙な揚げ加減。旬の野菜や海老、キスなどを、素材ごとに温度と時間を変えて揚げる。油の香りすら心地よく、口にすればサクッと軽やかにほどけていく。寿司と天ぷらという日本の二大技を一度に味わえるのも、「菫」ならではの魅力だ。

特に大切にしているのは、「地のものを使う」こと。東京時代には全国から選び抜いた魚介を扱っていたが、今は会津の恵みを中心に据える。山の幸や川魚、地元野菜など、季節の移ろいを皿の上で表現することを意識しているという。「この土地には、この土地にしかない味がある。それを生かしていきたい」と語る。

・ 店舗情報詳細