実幹

・イチオシメニュー

神奈川県鎌倉市十二所33-2。鶴岡八幡宮や小町通りの喧騒から少し離れた場所に佇む「実幹（みかん）」は、静かな空気の中で“本当においしいもの”と向き合える一軒だ。観光地・鎌倉のイメージとは少し違うこの立地にこそ、店主の料理への姿勢が表れている。

・こだわり

実幹の一日は、市場での仕入れから始まる。その日一番状態の良い魚や野菜を自分の目で見て選び、旬を逃さず店へ持ち帰る。献立は固定せず、仕入れによって変わるのが当たり前。「その日にいちばん良いものを、いちばんおいしい形で出したい」。その考えが、毎日の買い出しに表れている。

調理の基本は、素材を生かすこと。味付けは控えめで、余計な手を加えない。火入れや切り方、出汁の取り方など、細かな工程の積み重ねによって、素材本来の香りや旨みを引き出していく。派手な演出や流行を追うのではなく、「食べてほっとする味」を目指しているという。

実際に料理を口にすると、素材の輪郭がはっきりと感じられる。魚は鮮度の良さが際立ち、野菜は甘みや苦みといった個性が生きている。どの皿からも、仕入れから調理まで一貫して向き合っている姿が伝わってくる。

店主がいま特に力を入れたいと話すのが、観光客への発信だ。「鎌倉には有名なお店がたくさんあるけれど、少し足を伸ばすだけで、こんな店もあると知ってほしい」。観光の合間に立ち寄り、ゆっくり食事を楽しんでもらえる場所にしたいと考えている。

地元に根ざしながら、鎌倉を訪れる人にも開かれた店でありたい――。毎日市場に立ち、旬と向き合い続ける実幹の料理には、そんな思いが静かに込められている。喧騒を離れた先で出会う一皿が、鎌倉の記憶をより深いものにしてくれるはずだ。

・ 店舗情報詳細