・イチオシメニュー





石川県河北郡津幡町上河合。のどかな風景の中に静かに佇む寺院の一角に、「cafe蔵」はある。観光地の喧騒とは無縁のこの場所は、日常の延長線というよりも、意識を切り替えるための“間”のような存在だ。門をくぐった瞬間から、時間の流れがゆるやかに変わっていくのを感じる。
・こだわり
cafe蔵は、お寺の蔵を活用したカフェ。重厚な扉や年季の入った柱、静かに差し込む自然光が、空間そのものに深みを与えている。新しく整えられた内装でありながら、過度な装飾は施さず、あえて余白を残す。その佇まいが、訪れる人の気持ちを自然と落ち着かせてくれる。
店内に身を置くと、耳に届くのは外の風の音や、かすかな生活音だけ。BGMも主張しすぎず、沈黙さえも心地よく感じられる。カフェでありながら、どこか坐禅堂のような静けさが漂い、思考がゆっくりとほどけていく。
この場所を訪れたら、ぜひ味わってほしいのが「慶専寺珈琲」だ。住職自らが焙煎を手がけた、グアテマラ産のコーヒーで、cafe蔵を象徴する一杯でもある。深みのある香りと、やわらかなコクが特徴で、苦味や酸味が立ちすぎない穏やかな味わい。静かな空間の中で口にすると、その一口一口が、心にまで染み渡るように感じられる。
提供されるメニューは全体的に、この空間に寄り添う構成だ。派手さよりも、ほっと一息つける味わいを大切にし、素材の持ち味を活かしたやさしい仕上がりを心がけているという。器や盛り付けにも控えめな美しさがあり、視覚からも癒しを与えてくれる。
「ここでは、何もしない時間を過ごしてもらっていいんです」。そう話すスタッフの言葉が印象的だった。会話を楽しむのも、静かに過ごすのも、ただ窓の外を眺めるのも自由。時間の使い方に正解を求めない姿勢が、この場所の居心地の良さにつながっている。
日常から少し距離を置いた非日常の空間でありながら、決して敷居は高くない。お寺という場所が持つ包容力と、カフェとしての親しみやすさ。その二つが自然に溶け合い、「また来たい」と思わせる理由になっている。
「特別なことはしていません。ただ、静かに過ごせる場所を残したかっただけです」。その言葉の通り、cafe蔵は癒しを前面に押し出すのではなく、そっと差し出す存在だ。住職が焙煎した一杯の珈琲とともに、心を整える時間を味わえる場所。石川・津幡町で、静かに記憶に残る一軒である。
・ 店舗情報詳細
慶専寺Cafe蔵
080-6351-7322
石川県河北郡津幡町上河合ハ66
10:00-16:00
月・火・水・木

