うなぎと出汁巻 舟

イチオシメニュー

・うなぎとだし巻き
・ひつまぶし
・一品料理
 
 
 

京都・下京区、新町仏光寺を西へ少し入った静かな通りに暖簾を掲げるのが「うなぎと出汁巻 舟」。町家が並ぶこの界隈にあって、ふと足を止めたくなる落ち着いた佇まいだ。引き戸を開けると、まず目に入るのはゆったりと設えられた広めのカウンター。席間に余裕があり、視線が抜けることで、街中にありながら不思議と開放感がある。

・こだわり

カウンター越しに立つ店主は、東京の三つ星店、さらにはミシュラン星付きの名店で研鑽を積んできた人物。その経歴を聞くと一瞬身構えてしまうが、実際に料理と向き合う姿勢は驚くほど柔らかい。「特別な料理じゃなく、毎日食べたくなるうなぎを出したいんです」と語る言葉どおり、この店の魅力は“背伸びをしない上質さ”にある。

看板のうなぎは、焼きに入る前の下処理から一切の妥協がない。身の状態を見極め、余分な脂や臭みを丁寧に取り除くことで、ふっくらとしながらも後味の軽い仕上がりに。タレは甘さを控え、鰻本来の旨みを引き立てる設計だ。東京で培った技術をベースにしながらも、京都の水と空気に合わせ、どこか品のある味わいに落ち着いている。

もう一つの主役が出汁巻き玉子。箸を入れた瞬間にじゅわっと広がる出汁の香りは、思わず声が漏れるほどだ。昆布と鰹を軸にした出汁は、輪郭がはっきりしながらも角がなく、卵の甘みと一体になる。「派手さはないけれど、何度でも食べたくなる味」。その言葉が、そのまま一皿に表れている。

価格帯は驚くほど良心的だ。高級店での経験を持ちながら、あえて敷居を下げ、質の高い料理を日常に落とし込む。その姿勢が、地元客から観光客まで幅広く支持されている理由だろう。「修行先の味を再現するより、ここでしか出せない価値を作りたかった」と店主は語る。

また、この店ならではの楽しみとして、運が良ければ芸子さんや舞妓さんがふらりと立ち寄る光景に出会えることもあるという。決して観光向けに演出されたものではなく、あくまで日常の延長線上。そんな京都らしい一瞬に居合わせることができたなら、それもまた忘れがたい思い出になる。

確かな技術に裏打ちされた料理、肩肘張らずに過ごせる空間、そして京都の空気を感じさせる偶然の出会い。「うなぎと出汁巻 舟」は、特別な日にも、何気ない一日にも寄り添ってくれる一軒だ。静かに、しかし確実に、また来たいと思わせる力がここにはある。

・ 店舗情報詳細


店名

うなぎと出汁巻 舟

お問い合わせ

070-4466-7671

住所

京都府京都市下京区新町仏光寺西入ル菅大臣町205

営業時間

11:30-13:30

18:00-21:00

定休日