・イチオシメニュー



鎌倉市山ノ内。円覚寺や明月院へと続く静かな通り沿いに、「KOME TO COFFEE」は佇んでいる。観光地としての賑わいから少し距離を置いたこの場所は、訪れる人の歩調を自然と緩めてくれる。取材で暖簾をくぐると、木の温もりとほのかに香るコーヒーの匂いが迎えてくれた。
・こだわり
「お米とコーヒー。一見すると遠い存在に見えるかもしれませんが、どちらも日常に欠かせないものですよね」。店主はそう語る。KOME TO COFFEEの根底にあるのは、この二つを“無理なく並べる”という考え方だ。どちらかを主役に据えるのではなく、同じ目線で丁寧に向き合う。その姿勢が、店全体の空気感を形づくっている。
食事の要となるご飯は、土鍋で炊き上げる。火加減や蒸らしの時間に細やかに気を配り、その日の提供分だけを丁寧に仕込むという。ふっくらと立ち上がる粒感と、噛むほどに広がる甘み。そのご
飯に寄り添うのは、素材の味を活かしたシンプルなおかずだ。派手さはないが、土鍋ご飯の輪郭を引き立てることを第一に考えた構成になっている。
定食は数量限定で、なくなり次第終了。このスタイルも、「無理をしない」店の姿勢を象徴している。大量に作り置きすることはせず、あくまで一膳一膳に向き合う。そのため、目当ての定食に出会えたときの嬉しさも、この店ならではの体験だ。
一方で、店名の通りカフェとしての顔も持つ。コーヒーは焙煎度合いや産地による個性を大切にしながら、食事と合わせても飲み疲れしない味わいを意識。酸味や苦味が前に出すぎないよう抽出を調整し、余韻が穏やかに続く一杯を目指している。食後にも自然と手が伸びるバランス感は、海外からの来店客にも好評だという。
近年はインバウンド需要も意識しつつ、あくまで“日常の延長線”として楽しめる店づくりを心がけている。日本の食文化を強く打ち出すのではなく、土鍋で炊いたご飯と丁寧に淹れたコーヒーを並べることで、自然とその魅力が伝わるように。言葉を尽くさずとも、体験そのものが記憶に残ることを大切にしている。
空間づくりのキーワードは“余白”。席の配置や視線の抜け方、音の響きまで細かく計算され、一人でも複数人でも心地よく過ごせる。スタッフの接客も穏やかで、必要以上に踏み込まない距離感が保たれている。
「特別な体験より、静かに記憶に残る時間を」。その言葉の通り、KOME TO COFFEEは鎌倉という土地の空気を映し取りながら、日常にそっと寄り添う場所だ。土鍋のご飯と一杯のコーヒー。その組み合わせが、不思議なほど自然に感じられる理由が、ここには確かにあった。
・ 店舗情報詳細
KOME TO COFFEE
0467-81-3442
神奈川県鎌倉市山ノ内115-3
11:00 – 16:00
【1階 定食】
全日11:00〜15:00
【2階 カフェ】
全日11:00〜16:00
※17:00 完全閉店

