大福

・イチオシメニュー

静岡県浜松市中区・西伊場町。住宅街の一角にひっそりと佇む大福を訪れると、店に近づくほどに香ばしい焼き音と湯気の立つ匂いが食欲を刺激する。創業以来、地元で愛される理由は“餃子というシンプルな料理に、どれだけ真剣に向き合えるか”。その姿勢が店主の言葉や作業の一つひとつに現れていた。

・こだわり

餃子大福では現在、特徴の異なる二種類の餃子を提供している。ひとつは店主のこだわりが最も色濃く出た「ゲンコツ餃子」。もうひとつは浜松の名物をしっかりと受け継ぐ「浜松餃子」だ。

まず「ゲンコツ餃子」。名前の通り、ひと口では収まりきらないほどの存在感を放つ。ニンニクをたっぷり使い、パンチの効いた香りと旨味が特徴だが、決して重くならない。その秘密は、じっくりと甘みを引き出したキャベツ。細かく刻まれたキャベツは、火を入れたときにふわりと水分と甘さが広がり、肉の旨味とニンニクの強さを包み込む役割を果たしている。

一方「浜松餃子」は、地元の伝統をリスペクトしつつ、餃子大福ならではの“食べ応え”を追求した一品だ。浜松餃子といえばキャベツ多めでさっぱり、といった印象が強いが、餃子大福の浜松餃子は“肉肉しさ”が際立つ。噛んだ瞬間にじゅっと肉汁が広がり、遠州地方のブランド豚「遠州もち豚」の上品な甘みが鼻に抜ける。適度な脂と柔らかな肉質をもつ遠州もち豚は餃子に非常に相性がよい。

さらに驚くべきは、その日の仕込みは必ずその日のうちに完結させること。具材はもちろん、出荷する分の皮の状態まで毎日チェックし、鮮度が落ちる前に使い切る。“作り置きは一切しない”という姿勢は、繁忙期でも変わらない。「手間はかかるけど、今日のお客さんには今日の美味しさを出したいんです」と店主は胸を張る。厨房の奥では、スタッフがリズミカルに餡を包み、焼き台では次々と餃子が黄金色に焼き上がっていく。すべての工程が無駄なく、しかし丁寧に進んでいく様子は、まるで工芸品を仕上げる職人のようでもあった。

「餃子は家庭料理でもあるけど、店として出す以上はプロの味で勝負したい」。店主の言葉には、餃子への真摯な愛とプライドが込められている。

地域に根ざし、素材の良さと手仕事を大切にしながら作られる餃子大福の二つの看板商品。ガツンとくるゲンコツ餃子と、肉の旨味を存分に楽しめる浜松餃子。どちらも“一度食べたら忘れられない”と言われる理由が、店を出たあともしばらく口の中に残る余韻から伝わってくる。

・ 店舗情報詳細