・イチオシメニュー

岐阜県関市本町。刀都として知られるこの地で、百余年にわたり暖簾を守り続けてきた老舗がある。うなぎ料理専門店「辻屋」。創業以来、代々受け継がれる製法を守りながらも、時代に合わせた工夫を重ねてきた名店である。現在は五代目店主が舵をとり、その探究心と粘り強い試行錯誤が、辻屋の味をさらに深く進化させている。
・こだわり
辻屋の看板を背負ううなぎは「エンマン」というブランド。豊かな水と徹底した管理のもと育てられるこの鰻は、身の締まりと脂ののりのバランスが絶妙だ。焼き上げたときの香ばしさと、口に含んだときのほろりとほどけるような柔らかさは、一般的な養殖鰻とは一線を画す。
合わせるご飯には、北海道産の高級米「ゆめぴりか」を使用。しっかりとした粘りと甘みを持つこの米は、タレの旨みと鰻の脂をしっかり受け止め、丼全体の調和を作り上げる。炊き上がったご飯の艶やかさは目にも美しく、口に含めば粒立ちのよさが感じられる。まさに鰻の旨さを引き立てるために選ばれた相棒と言えるだろう。
辻屋の調理は、創業時からほとんど変わっていない。鰻を割き、蒸し、焼き上げる――その一連の流れを丁寧に行う。タレも先代から継ぎ足し続けるものを基盤にし、旨みと深みを重ねてきた。時代が変わっても、決して省かない手間がある。「伝統を守ることが最も難しい」と五代目は語る。だが、その姿勢こそが老舗の信頼を築いてきた理由なのだろう。
辻屋の味は、家庭で楽しむだけでなく、会食や接待の場でも重宝されてきた。落ち着いた雰囲気の店内は、地元の人々にとって特別な席として利用されることが多い。うなぎを前に自然と会話が弾み、場が和やかにまとまっていく。料理そのものが、人と人とをつなぐ力を持っているのだ。
関の町で味わう老舗のうなぎ。その一口は、百年を超える時間と、幾度もの試行錯誤の結晶である。辻屋の丼を前にすれば、誰もが自然と笑みをこぼし、ゆったりとした時間を楽しむことができるだろう。
・ 店舗情報詳細
辻屋
0575-22-0220
岐阜県関市本町5-14
11:00 – 14:30
17:00 – 20:00
不定期にて月一度火曜日休み
