・イチオシメニュー

静岡県御殿場市、富士山の麓に広がる自然豊かな町の一角に、ふんわりとした甘い香りを漂わせる小さな洋菓子店がある――それが「グランディール」だ。店名の“grandir”はフランス語で「成長する」という意味。その名のとおり、創業以来、地域の人々とともに歩みながら味を磨き続けてきた。
・こだわり
ショーケースに並ぶケーキの中でもひときわ存在感を放つのが、店の看板商品であるシフォンケーキ。ふわふわと軽やかで、口に入れた瞬間にすっと溶けていく。そのやさしい食感と上品な甘さに惹かれ、遠方から訪れるファンも少なくない。
店主がシフォンケーキにこだわる理由は、「素材の良さがそのまま味に出るから」だという。卵は地元・御殿場近郊の新鮮なものを毎朝仕入れ、小麦粉や砂糖も添加物の少ないものを厳選。ベーキングパウダーを使わず、卵白だけでしっかりと膨らませる昔ながらの製法を守っている。気温や湿度によって泡立ての加減や焼き時間を微妙に調整し、その日の“最適”を見極める。焼き上がったシフォンはしっとりと弾力があり、指で押すとゆっくり戻る。まるで空気そのものを食べているような軽さだ。
人気のプレーンをはじめ、ストロベリー、チョコレートなど、季節ごとの限定フレーバーも登場する。どれも香料に頼らず、素材そのものの香りを引き出しているのが特徴だ。特に地元産の茶葉を使った「御殿場抹茶シフォン」は、風味の深さが際立ち、県外からのリピーターも多いという。
また、「グランディール」が愛される理由のひとつが、家庭の延長のような温かい空気感だ。カウンター越しに店主と会話を交わしながらケーキを選ぶひとときには、どこか懐かしさがある。店主は「特別な日だけでなく、日常にそっと寄り添えるケーキを作りたい」と語る。その言葉どおり、華美なデコレーションよりも、素朴で飽きのこない味を大切にしている。
ギフト用の箱を開けると、シフォンの甘い香りがふわりと広がり、まるで焼きたての温もりをそのまま閉じ込めたよう。贈る人も、受け取る人も笑顔になる――そんな優しさが「グランディール」のお菓子には込められている。
富士山の麓という立地もまた、店の魅力を支えている。晴れた日には窓越しに雄大な山を望みながら、コーヒーとシフォンケーキを楽しむこともできる。季節ごとに変わる景色とともに味わうそのひとときは、まるで小さな旅のような贅沢だ。
「派手ではなくても、また食べたいと思ってもらえるケーキを」。
店主のそんな想いが、静かに、しかし確かに息づいている。
御殿場の澄んだ空気の中で、心までふわりと軽くなるような味わいを――
グランディールのシフォンケーキは、そんなやさしい幸せを届けてくれる。
グランディール
0550-89-7891
静岡県御殿場市ぐみ沢155-12
10:00-19:30
水・第1,3木曜日

