BNCインドカレー

・イチオシメニュー

札幌・白石区。緩やかに車が行き交う通り沿いに、昼時になるとスパイスの香りがふわりと漂う店がある。「BNCインドカレー」。ドアを開けた瞬間に広がるのは、食欲を刺激するインドスパイスの香り。そしてゆったりと流れる音楽と温かい空気感。この場所はただカレーを食べる店ではなく、“日常の中で旅をする感覚を楽しめる場所”だ。

・こだわり

BNCインドカレーのこだわりは、まず何よりもスパイスの調合にある。使用するスパイスは本場インドから取り寄せ、種類は数十種におよぶ。しかし驚きなのは、それらをただ混ぜるのではなく、料理ごとにブレンドを変え、火を入れるタイミングや煮込み時間までも丁寧に調整していることだ。店主は言う。「スパイスは強ければいいわけではない。香りの立ち方、深み、余韻。全部のバランスで決まるんです。」その言葉が象徴するように、味は決して派手ではないが、一口食べた瞬間に体の芯から満たされるような奥行きがある。

スパイスに寄り添う食材にも妥協はない。玉ねぎ・生姜・にんにくは毎日店内でカットし、ペーストにするところからスタート。玉ねぎの甘味を最大限に引き出すため、時間をかけて飴色になるまで炒め、そこへ段階を踏んでスパイスを重ねていく。この手間こそが、重厚でありながら食べ進めても重さを感じさせない“BNCの味”を生んでいる。

もうひとつの魅力が、バターチキンやキーマ、ほうれん草カレーといった人気の定番メニューはもちろん、期間限定のカレーも積極的に展開していることだ。季節の野菜や食材を取り入れ、新たな味の表情を探求し続けている。「同じ味を守ることも大切。でも、食べる楽しさを広げたい。」店主の柔軟で探究心あふれる姿勢が、店のファンを惹きつけている理由のひとつだ。

そして忘れてはならないのが、自家製ナンの存在感だ。オーダーが入ってから窯で一気に焼き上げられるナンは、外は香ばしく、中はもちもち。ほんのりとした甘みがカレーのスパイスと溶け合い、思わず笑みがこぼれる。ナンを手でちぎって熱々のカレーに浸す瞬間は、まさにこの店の醍醐味だろう。

取材の最後、印象深い言葉が店主の口からこぼれた。
「カレーは食べ物だけど、僕にとっては人を元気にする魔法でもある。辛さで汗をかいて、ナンをかじって、笑顔になって帰ってくれたらそれでいい。」

「食べると体も心も満たされるカレーがある」——その言葉どおり、BNCインドカレーには人を温かく包む力がある。派手さではなく本物の丁寧さで勝負する一皿。今日もこの店では、香り高いスパイスと焼きたてのナンが、訪れた人の時間にそっと寄り添っている。

・ 店舗情報詳細