喜左衛門

・イチオシメニュー

栃木県足利市通に店を構える「喜左衛門」。歴史ある街並みに溶け込むその佇まいは、一見すると昔ながらの和菓子店だが、店内に一歩足を踏み入れると、人形焼きに対する並々ならぬこだわりが随所に感じられる。ここでは、人形焼きが単なる“甘いおやつ”ではなく、素材と向き合うことで磨き上げられた一つの完成形として存在している。

・こだわり

喜左衛門が特に力を入れているのが、生地に使う卵だ。選ばれているのは、ビタミンEが豊富に含まれた特別な卵。卵本来のコクと自然な甘みがあり、焼き上がりの香りと色合いに明確な違いを生む。「卵で、ここまで変わるんです」と店主は語る。実際に焼き上がった生地は、しっとりとしながらも軽く、口当たりがやさしい。

中に詰められるあんこにも、一切の妥協はない。使用しているのは、十勝産の小豆。小豆の風味を最大限に生かすため、甘さを抑えた低糖あんに仕上げている。甘ったるさが残らず、最後まで食べ疲れしないのが特徴だ。子どもから年配の方まで「もう一つ食べたくなる」と感じる理由は、この絶妙な甘さの設計にある。

人形焼きは全部で7種類。その中でも特に人気が高いのが、こしあんだ。なめらかな舌触りと、小豆の旨みがすっと広がる味わいは、素材の良さと丁寧な仕事の積み重ねを感じさせる。ほかの種類もそれぞれ個性があり、選ぶ楽しさがあるのも、この店ならではだ。

焼きの工程もまた、職人の感覚がものを言う。火加減や焼き時間は、その日の気温や湿度によって微調整される。外側は香ばしく、中はふんわり。人形焼きというシンプルな菓子だからこそ、ごまかしはきかない。

「派手なことはできないけれど、ちゃんとしたものを作り続けたい」。その言葉どおり、喜左衛門の人形焼きには、素材選びから仕上げまで、一貫した誠実さがある。足利の街で長く愛される理由は、その一つ一つの積み重ねにあるのだろう。

・ 店舗情報詳細