そば屋こだるま

イチオシメニュー

・ざる蕎麦
・スミビがも九条ネギのそば
・花巻蕎麦

福岡県田川郡福智町。緑豊かな山あいの道を進むと、静かにのれんを揺らす一軒の蕎麦屋が現れる――それが「そば屋 こだるま」だ。観光地でも繁華街でもないこの場所に、週末になると遠方からの客が足を運ぶ。その理由は、香り高い手打ち蕎麦と、器から空間まで細部に宿る“上質な静けさ”にある。

・こだわり

店の看板メニューは、シンプルでありながら奥深い味わいのざる蕎麦。その一本一本には、店主の丁寧な仕事と、蕎麦に対するまっすぐな思いが込められている。

店主は毎朝、そば粉を挽くところから一日の仕事を始める。使用するのは、地元・九州産を中心に選び抜いた蕎麦の実。湿度や気温によって粉の状態を見極め、水回しの加減を微妙に変える。打ち上げた蕎麦は、角が立ち、細く美しい。つるりとした喉ごしと、噛むほどに広がる香ばしさが特徴だ。

つゆは、鰹節と昆布を贅沢に使った上品な仕立て。あえて甘みを抑え、蕎麦の香りを引き立てるように作られている。濃すぎず薄すぎず、口の中で一瞬で溶けるような透明感。ひと口すすると、素材の旨みが静かに広がる。

そして「こだるま」のもうひとつのこだわりが、器すべてを上野焼で統一していることだ。上野焼はこの地・福智町を代表する伝統工芸。柔らかい釉薬の表情と温かみのある質感が特徴で、400年以上の歴史を誇る。その上野焼の器に盛られることで、蕎麦の姿が一層美しく映える。冷たいざる蕎麦を載せる深みのある青磁皿、薬味をのせる小鉢、つゆを注ぐ片口――どれも一点一点が異なる表情を持ち、器と料理が一体となって季節を語る。

「おいしさは器も含めて完成するもの」と語る店主。その言葉どおり、ここでは食事そのものが“作品”として成立している。派手な演出はないが、一品を前にした瞬間、思わず息を呑む美しさがある。

食後には、蕎麦湯が提供される。白濁した湯をつゆに注ぎ、香りを楽しみながらゆっくり味わうと、体の芯まで温かさが染みていく。その瞬間、まるで一服の茶をたしなむような贅沢な気分に包まれる。

「せわしない日常から離れて、蕎麦一枚で贅沢を感じてほしい」。
店主のそんな願いが、「こだるま」には静かに息づいている。

ざる蕎麦を一枚。
それだけで満ち足りる時間が、ここ福智町・そば屋こだるまにはある。


店名

そば屋こだるま

お問い合わせ

090-4670-3375

住所

福岡県田川郡福智町上野1700-4

営業時間

11:00 – 14:00

定休日